2009/06/23

「コンピュータが子どもの心を変える」を読んで

ジェーン・ハーリーさんが書かれた邦訳本で、原題は「Failure to Connect」というシンプルなものです。タイトルの通り、子どもの(主に心の)発達とコンピュータなどの電子メディアがどのような影響を与えるかについて書かれています。さらに、もしコンピュータを積極的に活用するとしたら、発達の段階に合せてどのように活用するべきかのアドバイスもまとめられています。

コンピュータの影響を述べた本には良いか悪いかの一面から捉えるものが多いように思いますが、この本はコンピュータは11歳未満の子どもにはあまり有効ではないだろうと述べながらも、大人が一緒に子どもを指導する事でポジティブな影響を与えられる可能性についても言及しています。 その一方で実際にコンピュータを活用している学校などを訪問した経験から、効果的な活用が非常に難しい事も指摘しています。

この中で子ども向けの教育的ソフトウェアは、そのソフトウェア作成者の能力を投影している事と、それ故に内包される限界を指摘しています。所詮可能な事はプログラムされたものに過ぎないというわけです。 コンピュータが大きな可能性を秘めている事は事実ですが、その可能性を引き出すためにはコンピュータを使わなければいけません。誰かが作ったプログラムをおとなしく使っているだけでは、そういった能力を身に付ける事はできないという事ではないでしょうか。

個人的な経験からもコンピュータを能力を高めるための道具として使うためには、積極的な態度でコンピュータを使う必要があると実感しています。 もしそうしなければ刹那的にコンピュータの前でWebやチャットをしながら時間を浪費してしまうでしょう。 子どもが独力でそういった安易な方向に流されずに、良き道具としてコンピュータを活用する事は難しいだろうという印象を持ちました。

この本は教育者や子どもを持つ大人が興味を持ちそうですが、幅広いリサーチに裏打ちされた内容から得るものは多くあると思います。広くコンピュータやデディアに関わる方なら読むべきでしょう。

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