いまさらな感じもしますが、理化学研究所が神戸に建設しているスーパーコンピュータ(スパコン)に対して、来年度の予算計上をどのようにするか仕分けの議論としていろいろな意見がニュースに載っています。
そもそもスパコンの議論に限らず国家の予算を使う以上は、一定の成果の見込みや波及効果についての最低限のアセスメントや事業者に対してコミットメントを求める事はしなければいけない事だと思っています。
それが純粋に学術的な目的だとしても、そういうものだと皆が認識して進めていれば良いのだと思います。
今回の騒動で良かったこと
なにげに理化学研究所のハードルは上がっていると思います。 話題に上がったことで、スパコン作って終りみたいな事では済まされなくて、成果を求められているとプレッシャーを与えたでしょう。そうであって欲しいです。
ただNECの撤退とか、新規のインターコネクトと純粋なスカラ型スパコンで10PFLOPSを目指すように見えているとか、心配な点があります。
政府の姿勢を批判する事は簡単ですが、なぜ必要なのか、それが科学立国の面子を保つだけというのなら必要ないでしょう。 偉い人を出してきた方がマスコミも喜ぶんだろうけれど、「必要」というだけなら必要なくて、現場の人達はもっと語れると思うのですよ。 一連の騒動は、現場に重〜いプレッシャーを与えただろうし、この機会に上から下まで意識を合せて頑張って欲しいと思います。
今回は官僚もプロジェクトの必要性について、ちゃんと理解しているのか疑問でしたが、そういうことを語る必要ができたというのは、とても良い事だったといえるでしょう。 まぁ公開裁判にならないようなルール作りは必要ですが、透明性を高める事でプレッシャーを与えて、なおかつ、より高い投資対効果を生み出す事ができるはずです。
スパコンに求められるものとは
確かにスパコンを作る事自体が一つの重要な事業ではありますが、日本が目指す1位という判断基準もいろいろあります。
TOP500に載る事で一定の評価を得る事もできますが、実世界の問題を解決する高い実性能を叩き出す事も必要です。 地球シミュレーターはTOP500に載るためのベンチマーク性能では順位を落していますが、実計算では高い効率が売りの一つでもあります。 [ 地球シミュレーター 性能 ]
電力消費が尋常じゃないという指摘も地球シミュレーターにはありますが、 世界に誇る成果を挙げてきた事も事実ですし、それが世界1位だったという事実よりも重視するべき事ではないでしょうか。
何のためにスパコンを作るのか、スパコン自体が目的であればそれは一定の批判を受けてしかるべきと思います。
日本が核兵器開発をするなら、効率なんか無視してスカラ型のスパコンを作れば良いと思います。 きっといろいろな会社が買ってくれるでしょう。 流体系のモデルを使うなら、たぶんベクタ型スパコンを極める道が良いでしょう。
両方のタイプのスパコンを作るという話しならすっきりしますが、理化学研究所のスパコンはそもそもNECが撤退したことで、ベクタ型プロセッサを搭載するはずだった計画の変更を余儀無くされています。
NECの撤退で求めるスパコンを作れるのか
ある程度はスパコンを作る際に実世界に存在するどのような問題を解こうとしているのか、その効果がどの程度か考慮してしかるべきでしょう。
そこそこの問題を解くだけであれば、そこそこの性能を持つスパコンを複数作る方が経済的です。 一定の性能を持つスパコンを発注する企業に対する補助なんてのも考えられる案ではあります。
理化学研究所は次世代スパコンプロジェクトの説明の中で、いろいろな情報を公開していますが、その説明文の中の画像イメージがつぶれたままで判読不能だったり、やる気あるのかなぁという雰囲気を醸し出しています。 たぶん良く取って、売り込みが苦手なんですよね、きっと。
21個挙げられているターゲットアプリケーションをみると、現状で地球シミュレータやNEC SX-6で数〜数十GFLOPSの実効性能を出しているアプリケーションをずっと高いレベルに引き上げようとしている事がわかります。
こういった問題を解くために必要だと、それが出来て実世界にどのようなインパクトを与えるのか、そういう点で議論をして欲しいと思います。 学術的な成果だけでも良いと思うんですよ。それはそれで必要でしょ?って。
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