2009/10/29

ガイアの夜明け「百貨店・スーパーの大転換」をみて

最近はデパートの業態でも格安商品を充実させているという特集をしていました。

たぶん、その中でのデパートの企画担当者が言っていた「消費者には"ショッピングセンター"、"駅ビル"などが探索ルートに入っているが"デパート"は、そうではない。」という旨のコメントが現状を端的に表現しているのだと思います。

消費者は価格だけでモノを選ぶのか

デパートは高級品、安心感というイメージを売りにしてきたけれど、いまは値段が安くても実際に触れてみて問題がなければ買うという状況なのは間違いないでしょう。

だから、デパートも低価格品を提供しなければいけない、という事なのだと思います。

消費者はモノの価値に敏感になっているから、適正な価格は間違いなく必要です。 けれど、「適正な価格」にはデパートに本来あったイメージも含まれているはずで、消費者が価格にだけ反応するという前提が成り立たないと、現状を説明する事はできないと感じました。

Publish/subscribe型で消費者の行動を考えてみる

「なんでかな~」とか考えつつ、ふと消費者がいま受けとるメッセージに注目してみようと思いました。

消費者は勝手に行動するのでメディエーションの余地はないから、イベント駆動型でも良かったのかな。まぁメッセージ配送の経路はメディアだったり口コミだったりするわけで整備されていないという意味では、メッセージ指向な捉え方が正解なのかなぁ。

「低価格」というメッセージを受け取った消費者はポジティブなアクションを起します。 そしてデパートが消費者のポジティブなアクションに繋がるメッセージを発信しているかというと、たぶんない。きっとない。

で、無理に送った「低価格」のメッセージが消費者の意図しないアクションを引き起して、現場が混乱しているようにみえます。

デパートのメッセージング戦略

デパートが発信している「高級品」、「安心感」というメッセージは暗黙のうちに「高価格」という風に変換されて消費者はネガティブなアクションに反映させていると思います。

いまどきデパートの適正な価格は当たり前なので、こんなメッセージで消費者がポジティブなアクションを起す事はありません。安すぎるものがあれば買うでしょうけれど、それしか買わないでしょう。 なぜなら普通はスーパーをハシゴしてそういう購買パターンを持っているから。

デパートの優位性

でもね、デパートは商社と一緒に商品開発してみたりとか、品質チェックの体制とか、不具合がわかった場合のレベルの高い対応とか違いがあるはずなのですよ。

その重要なポイントが消費者にメッセージとして伝わっていないと思います。具体的に「高級品」、「安心感」の内容を説明してこなかった、これまでの日本的な言わずとも伝わるはずという態度で、価値をメッセージにして発信しない限り消費者にポジティブなアクションを引き起す事はないでしょう。

いまは具体的にどんなサービスがあるのか分からない状態で、デパートのアフターサービスなんて都市伝説なんじゃないかな。 実際に量販店と同じものを売って、フォローできない商品も多いでしょうし。

でも商品開発をした担当者がデパートで、その狙いをわざわざプレゼンするとか、ブランドに込めた思いを自分の言葉で語るとか、デパートの価値を説明するメッセージを具体化して発信しなければ、どこも一昔前のイトーヨーカドー的なものになるでしょう。

デパートのECサイトはスーパーと同じ

デパートのWebサイトの内容は普通のショッピングサイトですよね。 その商品がどうやって作られたか、とかそういう説明は見たことがないし、必要だとも思ってないのかなぁ。 商品を並べて好きなものを選んでもらうだけなら、いまどきスーパーでも出来るっていう。

それとも、それは有名な商品で分かる人が買っていくのか…。 いや、それなら楽天の専門店で買って行くでしょう。

どんな人がかかわって商品が出来るのかとか、でっかいスケールの話しの最後にさりげなく商品が置かれているとか、ブランドイメージが大切なら、そのイメージを具体化する作りにした方がいいんじゃないかなぁ。w3mとかCSSをオフにしたら、スーパーと違いがわかりませんからね。

結局、見た目が重視されすぎて、コンテンツの持つ本質的なメッセージへの説明がなさ過ぎなんだと思います。 スーパー的なコンテンツの構成の中に自身を当てはめてしまったら、価格で比較されるのは自明な気がします。

Amazonだって希少性の高いものが、そこそこの値段であって、かつ便利だから売れるんであって、楽天でも変えるなら、いつ届くかも書いてないデパートのECサイトなんて見向きもされないでしょう。

消費行動の多様化の意味

デパートが多様なメッセージを発信すれば、それを自分のスタイルに合うと判断した消費者がデパートにやってくると思います。

なぜ高級なのか、なぜ安心なのか説明することで、よりひっかかりが強くなるんじゃないでしょうか。

メッセージを増やせば良いとはいってもデパートが本業に関係のないメッセージを捏造したら、すぐにバレるでしょうね。 本業の強みを活かす方法を考えていないデパートの現状には、あまり明るい未来がないかもしれません。 バフェットさんも本業に集中しろっていっていますし。

さいごに

子供の頃は北陸地域中心にある大和というデパートに、 (子供からすれば)大きな回転するタワーに並ぶお菓子の量り売りがあったり、雰囲気が明かに違って行くのが楽しみでした。長崎屋もあったけれど普通のでっかいスーパーみたいな印象で、わくわくしなかったなぁ。似てるはずなんですけどね。

いままでなかったのかもしれないけれど、デパートにしかない価値観は必ずあって、そこにフォーカスする事はできると思います。

けれど、それを「わかってくださる方だけにお売りします」という態度のままでいるのは、あまりにもおごっているし、「わからない方には必要とされる安いだけのものを提供します」というのも本業をおそろかにしているといわざるを得ません。

安いものに価値を与えつつ、そこそこの値段で売る事は難しいのかなぁ…。

集客のためにユニクロを抱えても、取れたボタン付けるとか、ほつれたところを縫い直してみるとか、特別な生地使ってみるとか、何か特別なサービスをさせて、デパートに置く意味を与える必要はあるんだと思います。 いまの時代に合せて体制を変化させて、本業の本質は何か、語れるデパートが残っていくんでしょうね。 残ってくれないとスーパーだけになるのは寂しい気がします。

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