2012/10/14

「アシュリー事件」を読んで

別記事にまとめてはいましたが、改めて本を入手して読み終えたのでまとめておく事にしました。

ちなみにamazonでは2012/10/5の時点で「通常2~4週間以内に発送 (予定日:10月21日 - 10月31日)」というメールが届いていましたが、繰り上がり、10/13の午前には手に取る事ができました。

実はこの後で郡山市内のジュンク堂に在庫があった事が分かったのですが、場所は医学一般書。 在庫があると分かってからも、しばらく探してしまいました。

この本のポイント

最初の入口は、この事件の表層から賛成、反対、というリクアションを持つだろうとは思いますが、 この本全体では、そこからさらに深く入り、その行動や事象の背景をできるだけ明かにしようという姿勢が明確になっています。

著者が自身のブログで「アシュリー事件を語る方に」のエントリとして、娘さんとの日常を綴っている点からも、賛成、反対という二元論的な反応ではなく、当事者にもっと寄り添う形での、事実をもっと知ってから考えて欲しいという姿勢が感じられ、この本から受ける印象と結びついていきます。

改めて本書を読んで…。自分との距離感

私は何も特別な経験を持っているわけではありません。 当事者でもないのに…、といわれても返す言葉は持っていません。

それでも、ここ最近住民税の減税を掲げて当選したどこぞの市長が障害者向け手当の削減や事業の縮小を模索しているのは事実で、障害者に限らず各種セーフティーネットも見直しが行なわれていく流れになっています。

当然この流れには私自身も居て、この生活が誰かの犠牲や誰かへの皺寄せの上に成り立っているというのは気持ちの良いものではありません。

しかし、その罪意識が軽くなるように、排他的な方向でコントロールを効かせるというのは本末転倒でしょう。

といった感じで、利己的な観点で考えても、アシュリー事件での一連の流れを正当化するのは難しいと感じます。

自身の生存を認めてもらうために大多数に属するというではなく、この世の中は誰でもそのメインストリームから外れる可能性を持っているわけで、マイノリティを包含する社会を作っていくというのが、自身のためでもあるというのが日本なら、まだ共有可能な考え方だろうと思います。

とはいえ、いじめが社会問題として今年は大きく取り上げられましたが、この問題が一定の解決がなされずに、ことなかれ的に放置されるようなら、かなり暗い先行きでしょう。

根っこの部分では、異質な者をターゲットにするいじめの構造と、ことなかれ的に全体としての問題への対応を積極的にとってこなかった責任者の行動は、この本を読んで感じる印象と重なるところがあると思います。

震災後も福島県内に居住しているというだけで、遠く離れた人達からどう思われているんだろうなぁ、と考えない事もないわけで、そんなに遠い問題でもないというのが全体を読んでの本当にざっくりとした感想です。

勘違いしていたこと

この本の中でも繰り返し取り上げられていますが、アシュリーの両親が一連の"療法"を行なうにあたって、迷いがなかったという点については、当然葛藤があっただろうと考えていました。

実際どうだったのかはわかりませんが、少なくとも両親の行動からも、この両親が迷いなく我が子に医療的な処置を依頼していた様子が想像できます。 それは異様ではあり、その行動を当然のものとして捉えるために、その両親像について、いくつか残酷な偏見かもしれない想像をめぐらせている自分が少し嫌にはなります。

それでも世の中にはいろんな主義、主張の人がいるわけで、やはりこの両親を非難するというのは間違っている方向として考えるべきでしょう。

でも、そういう風に感じる人は少なくて、賞賛するか、非難するかの選択をするのが普通かもしれません。 ずっと昔に祖父とマインドコントロール化にある某教団の幹部インタビューをテレビでみてて、誰でもこうなる可能性があるといったら、「そんなことはない。こいつは馬鹿なのだ。」といい返されて喧嘩になりそうになった事を思い出します。

今年は生活保護の話題でも弱者の義務というか、自己責任について、報道が多くあったと思います。 生活保護については批判をかわすために、家賃の行政による直接振り込みや、食費のチケット制という話題もありました。

パチンコをやりたいなら、すればいいとは思うんですけど、そうさせないために選択肢を奪う事が成長には繋がらないと思うんですよね。かといって効果的な方法も少ないように思えます。

手を差し延べることはできても、その手を握るかどうは相手次第でしょうし、その手がどういう人の手かによって、握りたいと思うかどうかの自由ぐらいはあるはずです。

そういう答えの出ない問題に望む時には、基礎となる考え方を固めないといけないと思うんですが、そういう訓練のためにも、この本を読んで考える事で、自分の中にあるはいろいろな思いを引き出してくれると思います。

一番怖いのは、この事件を通しての一連の行動がいろいろ検討して影響を考慮した上でとられたものであればまだ救いはありそうですが、無自覚に当然のものとして新たなアシュリーが造られてしまう事でしょう。

2012/10/11

「アシュリー事件」を閲覧して

児玉真美さんが書かれた「アシュリー事件」を読みました、ではなく閲覧しました。 ちゃんと読もうと、amazonやら紀伊国屋で入手しようと予約中ですが、どこも取り寄せ状態で、出版社に在庫があってもしばらく時間がかかりそうです。

いままでの経験からは最悪、入手不可も有り得るんじゃないかなと危惧しています。

2012年10月11日 追記:
10/11の時点では、アマゾンと紀伊国屋のオンラインストアで入手可能と情報が変更されています。 無事に入手できそうです。

さて入手できないなら図書館で内容を確認しようと思いつつ、Webで串刺し検索が出来るのは非常に便利なのですが、福島県内の公立図書館では郡山女子大と福島市立飯館分館、南相馬市立の3個所にしかありません。

pandaboardが5V2Aでは安定して動かないという情報もあったので確認がてら、pandaboardとc920を車に積みつつ、飯館までドライブがてらいってきました。

ここで自分の意見を表明しておくと、こういう処置には反対で、本人の意思が確認できない状態であったとしても、生命の危機がない限り、こういう不可逆的な対応をするべきではありません。

その理由は、この本の中で引用されているいくつかのアシュリーの親に否定的な意見に含まれています。

ただ、一点だけ、私には介護の経験がないし、そのご苦労は想像する事もできません。 この文書を書くにあたり、個人を非難する気はなく、アシュリーとその家族を心からいたわりたいと思います。

しかし、この問題の構造については考えてみる事にします。

この本を読んだ理由

最近は科学の生い立ちやら疑似科学の定義を求めて哲学寄りの本を読んだりしているので、その影響もあって興味を持ちました。

でもアシュリー事件そのものについての情報を知ったのは完全に偶然で、もうよく覚えていません。 たぶん脳死による臓器移植を尊厳死に広げるとかいう、そういう話について検索していて、児玉さんのブログがひっかかったのだと思います。

そして、この子供に対して行なわれた治療なのか判然としない処置について、その効果が本当にあるのかどうかという点を確認するために本を閲覧しに行きました。

父親が肯定的に捉えている様子から効果があるのかなと思いつつ、年齢を考慮すると、訴えているような苦痛が発生するずっと前に対応しようとしている様子が異常に思えました。 「効果がないんじゃないのかなぁ…」と思い、この本で確認したいと思いました。

この本から得られる情報

著者である児玉真美さんの考えが全面に出ているはずなのに、書かれている内容は裁判官や哲学者、社会学者などの発言などを元に、様々な意見が掲載されて、バランス良くまとめられています。

調べたかった、この治療が効果的だったのか、という点については、年齢からまだ効果が不明ところがあり、また、エストロゲンの大量投与などの処置に対する否定的な意見がいくつか掲載されていました。

元々が医療上の必要から選択された理由ではありませんから、否定的な意見に説得力があるのも当然かもしれません。

これから起こるかもしれない不安に対する過剰なリアクションが、この問題を異様にし、また引き立てているのだと思います。

閲覧を終えて

この本を眺めて、私は知的障害を持つ人間に対する基本的人権や尊厳をどの観点で扱うかという事が論点だと理解しました。

論理的に説明をつけて論を展開するのは、もうすでにこの本の中で様々なものが取り上げられています。

主観的には、この障害者や両親の立場に自分の気持ちを投影して、それぞれの立場で考える事になるんだと思います。 「(本人の苦痛や気持ちが分からないのに処置をされて)かわいそう」、「(世話をする親が)つらそう」、等々、どちらの立場から考えるかによって結論は分かれる可能性が大きい話題だとは思います。

これが本人意思の表明が明確に伝われば尊重しましょう、という事になるんでしょうけれど、知的障害があるというところで、本人の意思が不明なら保護者である親の意見をまずは尊重しましょうという意見も成立しそうには思えます。

ただ通常であれば本人が成人するまで、あるいは判断能力を持つまで待ち、本人の意思を確認する事になるわけですが、それが望めない例であるわけです。

意思があるのかどうか、少なくとも現在の知見では、かなり動物的本能に近い判断能力しか持っていないと考えられる子供をどのように尊重するのか、その状態からの回復の見込みがほぼないという状況であれば、親が子を思って行なうその対応を当然だと考える人もいるでしょう。

しかし考えを進めていくと、どこかに境界があるように思えます。 人間が年齢をかさねて過去には知的な活動をしていたものの、幼児のような状態になり、高度な判断ができないと判断されるようになる人もいます。

アシュリーの事例に適用された考えを使えば、保護する者の意向が尊重されるべき事例ではないでしょうか。 もちろんアシュリーと同じ処置は必要ないですが、問題は処置の内容ではなく、QOL向上のために非医療的な処置を行なう事に説得力があるかどうか、という事になります。

こういう処置が許されるのであれば、その延長線上には、保護者というより庇護する者の意思が優先されるべきだという事になるのだと思います。

将来は延命治療の代りに尊厳死を与えてあげたりするような親切が待っているのかもしれません。 しかしアシュリーのケースは延命やQOLの向上が述べられていますから、尊厳死はいいすぎでしょう。
むしろ、その反対に徹底した延命治療が行なわれると考えるべきです。

しかし、それは良いことでしょうか?

どちらにしても人間としての扱いではないと思います。 たしかに本人の意思を察知、判断する事は超常的なテレパシー能力でもない限り難しいでしょう。

かといって、権利団体が主張するような、親ではない第三者機関が判断するような法整備が行なわれても、確認のしようがないのですから、将来の訴訟を恐れて不可逆的な対応を取る事はないと思われます。 少なくとも積極的な処置をするインセンティブは持たないと考えるのが妥当でしょう。

であれば、痛みや苦痛という状態に至った時点で医療を行なうという事になり、消極的な対応だと捉える事もできます。

しかし、意思を持った人間であれば拒否するかもしれないような過剰な処置を行なうべきでしょうか。 状況が違うというかもしれませんが、それでも現時点では必要がない行為を行なう事に正当性はあるでしょうか。

この本を読んで感じた事は、必要性の証明がおそらくできない行為を行なった事。それは人体実験に近い行為であったこと。医師たちに患者本人を尊重する気持ちがなかったこと。 そして、そういう行為が必要だと考えつくほどに家族が疲弊している現実です。

この本にありますが、家族たちの継続的なケアと本人が家族を失なった後もケアを受けられるという希望を持てる社会を望むべきで、実現のために動くべきなのだと思います。

脳は自分の行為を論理的に整合性を取るように働きます。 場合によってはしてしまった自分の人格と行為の間のギャップを埋めるために、いろんな記憶や感情を捏造します。 この状態であれば家族は行為について論理的に閉じるように、第三者からは容認できないような内容だとしても、理屈を考えるでしょう。

別にIT企業幹部でなくても、自身が生きている間に我が子の将来が保障されない現実を変えられないと悟れば、お手軽な一連の行為を思いついて、実現に全力を注ぐのも理解はできます。

しかし医師たちは家族に流されずに客観的に行動するべきでした。 徹底して患者本人に寄り添って尊重するという原則がこの医師たちにあれば、自分たちの判断に余るこの申し立てについて、裁判所への確認が行なわれただろうと思います。 イギリスの事例はアメリカで認められてしまった(かのようにみえる)事例のため、将来の訴えを恐れて事態が進展したのだろうと思います。

徹底的に非難されるべきはこの医師たちのみでしょう。 それでも自死については、それを選択した理由は分かりませんが、残念な事だと思います。

根源的な性質を持つこの問題は、哲学的な人たちの好奇心をかきたてるでしょう。 しかし一般の人達は、その胸の中に生まれた感情をうまく整理する事ができずに、様々なリアクションを行なうのだと思います。

本質的に解決するべきは、どんな状態で生まれて、どんな状態になっても、人間らしくケアされるだろうという希望のある社会を実現することなのだと悟り、そして絶望して、希望を失いそうになります。

2012/10/10

Ubuntu 12.04 LTS (precious)にVMWare CLIを導入してみる

空いているPCにIntel NICを追加して、VMWare vSphere Hypervisor (ESXi)を導入したので、手元のクライアントから操作できるようにコマンドラインクライアント(vCLI)を導入しました。

ちょっとした問題があったので、まとめておく事にします。

インストール手順

CLIのインストール手順はマニュアルのにあります。 必要な前提パッケージを導入すれば、$ sudo vmware-vsphere-cli-distrib/vmware-install.plを実行するだけなのですが、次のようなエラーメッセージが表示されました。

導入時のエラーメッセージ
...
Thank you.

http_proxy not set. please set environment variable 'http_proxy' e.g. export
http_proxy=http://myproxy.mydomain.com:0000 .

ftp_proxy not set. please set environment variable 'ftp_proxy' e.g. export
ftp_proxy=http://myproxy.mydomain.com:0000 .

$ 

正常終了したのかと思いましたが、マニュアルにはコマンドを配置するパス(デフォルト/usr/bin)を指定する段取りがあるはずで、案の定esxcliコマンドは導入されていませんでした。

スクリプトが途中で終了する理由

どういうわけか、プロキシー設定("export http_proxy=..." or "export ftp_proxy=...")を行なわないとスクリプトが終了する作りになっています。

vmware-vsphere-cli-distrib/vmware-install.plの該当個所の抜粋

...
      my $httpproxy =0;
      my $ftpproxy =0;

      if ( direct_command("env | grep -i http_proxy") ) {
         $httpproxy = 1;
      } else {
         print wrap("http_proxy not set. please set environment variable 'http_proxy' e.g. export ht
tp_proxy=http://myproxy.mydomain.com:0000 . \n\n", 0);
      }
      if ( direct_command("env | grep -i ftp_proxy") ) {
         $ftpproxy = 1;
      } else {
         print wrap("ftp_proxy not set. please set environment variable 'ftp_proxy' e.g. export ftp_
proxy=http://myproxy.mydomain.com:0000 . \n\n", 0);
      }

      if ( !( $ftpproxy && $httpproxy)) {
         uninstall_file($gInstallerMainDB);
         exit 1;
      }
...

プロキシーがなくとも外部ネットワークにアクセスできる環境であれば、この評価式全体をコメントアウトしてしまうのがお勧めです。最後のif文の評価式全体をコメントアウトしてあげると、プロキシーを設定することなしに導入する事ができます。

正常終了した時のメッセージ

最終的にインストールに成功した時のメッセージの最後の方は、次のようになっていました。

...

Please wait while configuring perl modules using CPAN ...

CPAN is downloading and installing pre-requisite Perl module "Archive::Zip" .

CPAN is downloading and installing pre-requisite Perl module
"Class::MethodMaker" .

CPAN is downloading and installing pre-requisite Perl module "SOAP::Lite" .

In which directory do you want to install the executable files?
[/usr/bin]

Please wait while copying vSphere CLI files...

The installation of vSphere CLI 5.1.0 build-780721 for Linux completed
successfully. You can decide to remove this software from your system at any
time by invoking the following command:
"/usr/bin/vmware-uninstall-vSphere-CLI.pl".

This installer has successfully installed both vSphere CLI and the vSphere SDK
for Perl.

The following Perl modules were found on the system but may be too old to work
with vSphere CLI:

UUID 0.03 or newer

Enjoy, 

--the VMware team

正式にサポートされているUbuntuは10.04なので、12.04 LTSでは少し前提となるパッケージが違うようですが、とりあえずは動いています。

何か不都合があるのかは、これから使ってみて確認していきたいと思います。

2012/10/09

シリアルから扱えるよう、Pandaboardのgettyを有効にしてみた

前回まででPandaBoardが起動するようにはなったのですが、シリアルの通信は途絶えてしまいシェルが起動するという事にはなりませんでした。

HDMIは使わないので、サーバーとして扱えるようにネットワークとシリアルを有効にするところまでです。

環境

ベースにしているrootfsは前回と同様にL24.9-PandaBoard_validation_environment.tar.gzです。

MLOとu-boot.imgをgitから準備をして起動するようにはなりました。

現状

で、起動はするものの、runlevelを聞いてきたところで数字は打つものの処理が止まってしまいます。

runleveの入力後に処理が停止する様子


...
Enter runlevel: 2
INIT: Entering runlevel: 2
INIT: no more processes left in this runlevel
...

まぁgettyを起動させれば良いのでしょうと、いうわけでSDカードをUbuntu 12.04 LTSに差し、認識された/dev/sdd2/mnt/mmc2にマウントして、/mnt/mmc2/etc/inittabファイルを編集したりしました。

ここら辺の強調したデバイス名やらは環境に依存して変化するので読み替えて下さい。

/etc/inittabを変更して、ちょっとだけ改善

ちょっとだけ進んだところ


...
Enter runlevel: 2
INIT: Entering runlevel: 2

.-------.                                           
|       |                  .-.                      
|   |   |-----.-----.-----.| |   .----..-----.-----.
|       |     | __  |  ---'| '--.|  .-'|     |     |
|   |   |  |  |     |---  ||  --'|  |  |  '  | | | |
'---'---'--'--'--.  |-----''----''--'  '-----'-'-'-'
                -'  |
                '---'

The Angstrom Distribution (none) ttyO2

Angstrom 2010.4-test-20100406 (none) ttyO2

(none) login: root
Login incorrect

よくよくみると、いろいろマニュアルに問題があるようなので、そこら辺をまとめておきます。

inittabファイルの書式について

Minimal-FSの/etc/inittabは次のようになっていました。

null::sysinit:/bin/mount -t proc proc /proc
null::sysinit:/bin/mount -t sysfs sysfs /sys
null::sysinit:/bin/mount -t usbfs usbfs /proc/bus/usb
null::sysinit:/bin/mount -o remount,rw /
null::sysinit:/etc/init.d/udev

ttyO2::respawn:/bin/sh

ここで最後の行でtty02tty2のように数字を除いて指定する必要がありました。

ここを修正すると起動後にrunlevelを入力させた後にシェルが起動します。

まぁMinimal-FSはapt-getもないので、本当にどうしようもないのですが、とりあえずこれでrootでログインする事が可能になります。

別の文書ではboot.scrでカーネルパラメータを指定するような指定もありましたが、デフォルトのkernelパラメータは次のようになっています。

kernelパラメータ

Kernel command line: console=ttyO2,115200n8 vram=16M root=/dev/mmcblk0p2 rw rootfstype=ext3 rootwait

もしこのパラメータを変更する必要があれば、mkimageコマンドを使ってboot.scrファイルを生成します。 今回は試したものの必要ないので、boot.scrファイルは使っていません。

FAQによれば、コマンドラインは次のようになっています。

http://omappedia.org/wiki/PandaBoard_FAQより抜粋


Step-1: create a boot.scr.txt like:
fatload mmc 0 0x80300000 uImage
echo Booting from mmc0 ...
setenv bootargs console=ttyO2,115200n8 noinitrd init=/sbin/init root=/dev/mmcblk0p2 rootwait rw loglevel=8
bootm 80300000

Step-2: run:
mkimage -A arm -T script -O linux -C none -a 0 -e 0 -n "boot.scr" -d boot.scr.txt boot.scr

mkimageコマンドは手元のUbuntu 12.04 LTS上で実行していますが、 ここら辺はuboot-mkimage-0.4当りをキーワードに検索すれば関連する情報が探せるかと思います。

さいごに

rootでログインができたので、必要そうな情報をコピーしておきます。

ネットワークカード
# ip addr
1: lo: <LOOPBACK> mtu 16436 qdisc noop 
    link/loopback 00:00:00:00:00:00 brd 00:00:00:00:00:00
2: usb0: <BROADCAST,MULTICAST> mtu 1492 qdisc noop qlen 1000
    link/ether 22:17:88:b7:fc:59 brd ff:ff:ff:ff:ff:ff
/proc/cpuinfo

この情報をみるとOMAP4460としては認識されていないのかなと思えます。 あとでちゃんとしたkernelを使って検証することにしましょう。

# cat /proc/cpuinfo 
Processor       : ARMv7 Processor rev 10 (v7l)
processor       : 0
BogoMIPS        : 1396.94

processor       : 1
BogoMIPS        : 1363.33

Features        : swp half thumb fastmult vfp edsp thumbee neon vfpv3 
CPU implementer : 0x41
CPU architecture: 7
CPU variant     : 0x2
CPU part        : 0xc09
CPU revision    : 10

Hardware        : OMAP4430 Panda Board
Revision        : 0020
Serial          : 0000000000000000

さいごに

ここら辺でMinimal-FSは止めて、Ubuntu 12.04 (precise) を動作させてみようと思います。

Ubuntu 12.04 LTSでPandaBoard ES用のu-boot/MLOイメージを作成してみた

Pandaboard ESを入手したのですが、どうも配布されているu-boot.img/MLO/uImageではうまく起動させることができませんでした。

手順は公開されているので、Ubuntu 12.04 LTSをホストにしてクロスコンパイル環境を使ってARMEL用のバイナリを作成してみました。

環境

使用している機材などは次のようになっています。

  • 対象: PandaBoard ES Rev.B1
  • ホストOS: Ubuntu 12.04 LTS 64bit版
  • シリアルケーブル: Arvel SRC06-USB (FTDIチップ使用)
  • SDカード: TOSHIBA製 Class6 SDHC 4GB (いわゆる白東芝カード)
  • rootfsイメージ等: L24.9-PandaBoard_validation_environment.tar.gz
  • 差し替え用MLO/u-boot.imgファイル: origin/Linaro-u-boot-2012.04.2

基本的なインストールの流れ

本家からセットアップのインストラクションを探して、Linux Minimum (Pandaboard Minimal-FS)に辿り着きました。

L24.9-PandaBoard_validation_environment.tar.gzはここで入手できたのですが、X-Loaderはhangしてしまいました。

PandaBoard ES uboot howtoという文書に従ったのですが、少しだけ修正する必要がありました。

$ mkdir pandaboard-es
$ cd pandaboard-es
$ git clone git://git.linaro.org/boot/u-boot-linaro-stable.git
$ cd u-boot-linaro-stable
$ git checkout -b pandaboard-es origin/Linaro-u-boot-2012.04.2
$ export CROSS_COMPILE=arm-linux-gnueabi-
$ make omap4_panda_config
$ make

変更したのは、2011.12のブランチを取得するようになっていたところを最新の2012.04に変更し、CROSS_COMPILE環境変数に指定する文字列から-noneを削除しました。

これをしない場合に、makeが正常に終了しない問題が発生しています。

ARM用gccをUbuntu 12.04 LTSに導入する

手元のUbuntu 12.04 LTSにarm用のgcc環境を構築するには、次のコマンドを実行します。

$ sudo apt-get install gcc-arm-linux-gnueabi

arm用のgcc-4.6が導入されています。 これで、コンパイルに必要なものはほぼ揃うはずです。

成果物の場所

目立ちませんが、$ makeを実行したカレントディレクトリに必要なファイルが作成されています。

  • MLO
  • u-boot.img

この2つのファイルをSDカード上に作成したFAT32領域に書き込めば、カードをPandaboardに移してテストです。

そういえば、配布されているイメージでは、u-boot.imgではなく、u-boot.binが入っていたんですよね。

どっちにしろMLOが見つからないらしく、X-Loader 1.41がエラーを出すので、u-bootまで処理が進んでいないと思われるので、関係ありませんが…。

確認に必要な環境

HDMIで液晶ディスプレイなどに出力をするにしても、まずはシリアル経由で接続しないとX-Loaderやら起動時の画面出力やらが分かりません。

Linux上で動作するUSBシリアルケーブルは内部にFTDIのチップを積んでいるものがお勧めです。

pandaboardのシリアルに接続する場合の、kermitの設定

次の設定を~/.kermrcに入れていて、kermit起動後にC-Kermit> connectとタイプして問題なく動作しています。

Ubuntu 12.04 LTS上の~/.kermrcファイルの全体

set port /dev/ttyUSB0
set speed 115200
set carrier-watch off

手元のPandaboardからの出力は、こんな感じになっています。

起動時のコンソール出力の抜粋

U-Boot SPL 2012.04.01 (Oct 09 2012 - 13:49:33)
OMAP4460 ES1.1
OMAP SD/MMC: 0
reading u-boot.img
reading u-boot.img

U-Boot 2012.04.01 (Oct 09 2012 - 13:49:33)

CPU  : OMAP4460 ES1.1
Board: OMAP4 Panda
I2C:   ready
DRAM:  1 GiB
MMC:   OMAP SD/MMC: 0
Using default environment

In:    serial
Out:   serial
Err:   serial
Net:   No ethernet found.
checking for preEnv.txt
reading preEnv.txt

** Unable to read "preEnv.txt" from mmc 0:1 **
Hit any key to stop autoboot:  0
reading uEnv.txt

** Unable to read "uEnv.txt" from mmc 0:1 **
reading boot.scr

** Unable to read "boot.scr" from mmc 0:1 **
reading uImage

2665748 bytes read
Booting from mmc0 ...
## Booting kernel from Legacy Image at 82000000 ...
   Image Name:   Linux-2.6.35-g6d019da-dirty
   Image Type:   ARM Linux Kernel Image (uncompressed)
   Data Size:    2665684 Bytes = 2.5 MiB
   Load Address: 80008000
   Entry Point:  80008000
   Verifying Checksum ... OK
   Loading Kernel Image ... OK
OK

Starting kernel ...

Uncompressing Linux... done, booting the kernel.
Linux version 2.6.35-g6d019da-dirty (danders@ccd-dev) (gcc version 4.3.3 (GCC) ) #15 SMP PREEMPT Wed Sep 8 15:33:37 CDT 2010
CPU: ARMv7 Processor [412fc09a] revision 10 (ARMv7), cr=10c53c7f
CPU: VIPT nonaliasing data cache, VIPT nonaliasing instruction cache
Machine: OMAP4430 Panda Board
Memory policy: ECC disabled, Data cache writealloc
OMAP4430 ES2.0
....

さいごに

まだgettyが最後に起動しないので、設定としてはいろいろ足りていないのですが、とりあえず起動するようにはなりました。

ロボットとか作っている人達をテレビでみるとこのカードを積んでたりしますよね。 サーボみたいに電流を流すものは扱わないのですが、ホームセンターなんかでバイク用の小型12Vバッテリーを眺めると、いろいろ夢は広がります。

まぁ12Vを安定的に得るのと充電するので、いろいろ大変そうですけどね…。

それでも携帯電話向けにソーラーパネルが付いたリチウム電池は普通に売っているので、そのままでは実用的に使えないでしょうけど、そんなに手間をかけなくてもモバイルでは運用できるのかな…。

2012/10/07

Ubuntu 12.04 (precious) amd64版にvCLIを導入しようとして、libtiff4関連のエラーに逢う

VMWare ESXi (VMWare vSphere Hypervisor 5.1)を導入しているマシンにリモートからアクセスするために、VMware-vSphere-CLIをダウンロードし、導入しようとしました。

導入方法はマニュアルのInstalling the vCLI Package on a Linux System with Internet Accessにあるのですが、ia32-libsを導入しようとしてエラーになってしまいました。

$ sudo apt-get -f install
パッケージリストを読み込んでいます... 完了
依存関係ツリーを作成しています
状態情報を読み取っています... 完了
依存関係を解決しています ... 完了
以下の特別パッケージがインストールされます:   
  libtiff4:i386
以下のパッケージが新たにインストールされます: 
  libtiff4:i386
アップグレード: 0 個、新規インストール: 1 個、削除: 0 個、保留: 0 個。
226 個のパッケージが完全にインストールまたは削除されていません。
142 kB 中 0 B のアーカイブを取得する必要があります。
この操作後に追加で 501 kB のディスク容量が消費されます。
続行しますか [Y/n]?
(データベースを読み込んでいます ... 現在 560449 個のファイルとディレクトリがインストールされています。)
(.../libtiff4_3.9.5-2ubuntu1.2_i386.deb から) libtiff4:i386 を展開しています...
dpkg: /var/cache/apt/archives/libtiff4_3.9.5-2ubuntu1.2_i386.deb の処理中にエラーが発生しました (--unpack):
 './usr/share/doc/libtiff4/README' is different from the same file on the system
dpkg-deb: error: subprocess ペースト was killed by signal (Broken pipe)
以下のパッケージの処理中にエラーが発生しました:
 /var/cache/apt/archives/libtiff4_3.9.5-2ubuntu1.2_i386.deb
E: Sub-process /usr/bin/dpkg returned an error code (1)

解決方法はあっさりしたものだったのですが、不思議な現象に思えたのでメモを残す事にしました。

まずは対処方法から

前述のエラーへの対応方法は、とりあえずlaunchpadで、tiffを検索し、amd64版のlibtiff4パッケージをダウンロードして、手動で導入します。

$ sudo dpkg -i libtiff4_3.9.5-2ubuntu1.2_amd64.deb

続いてエラー原因を解消します。

$ sudo apt-get -f install

なんというか不思議なのですが、これで32bit版のlibtiff4:i386が導入され、対応は完了です。

原因について

結局、原因については不明です。

解決方法は、Ubuntu Forumに記述がありました。

この手の解決策は以前にもあったと思いますが、Ubuntu 12.04にアップグレードした際に何か問題があったのだと思います。

Ubuntu 12.04 amd64版をクリーンインストールした場合には問題はないだろうと思うのですが、エラーメッセージからは32bit版と64bit版で、READMEファイルの配置場所が重複している事が原因だとは思いながらも、どうすれば良いのか分からずしばらく悩んでしまいました。

これで本題のVMWare ESXi 5.1用のCLIが導入できますが、それはそれで問題があったので、別の記事にまとめる予定です。